今回の新潟県中越地震のあと、さまざまな情報がマスコミ、インターネット、クチコミなどを通じて流れたが、いちばん迷惑したのは、新潟のボランティアからのメールだという紹介の転送メールだった。発信者が某環境防災NPO組織の事務局長だったために、わたしもあやうくこの転送メールの内容を信じてしまうところだった。「情報源の信憑性」が流言の信用度に大きく影響するといわれるが、流言の研究者である私が、あやうくその餌食になってしまうところだった。引っかかりそうになったのは、私だけではなく、災害関連の某学会事務局も同じだったようだ。悪いことに、学会のMLで追伸の形で紹介をしてしまったとのことだ。
その問題のチェーンメールとは次のようなものだ。
お疲れさまです。
新潟からの転送メールです。
いろいろと考えさせられるメールです。
ご参考までに。
発信は、26日です。
○○です。
小千谷市役所、小学校での救援物資の配給や、炊き出しなどを手伝っています。
現場はまだまだ混乱しているし、人出も足りていません。
そんな状況下で、マスコミの取材陣が50人近く現場付近を陣取っています。
小千谷市役所の正面に車を止めて、そのために、救援物資を運ぶトラックは
遠くに止めることしかできず、ボランティアの人たちがせっせと現場に物資を
運んでいますが、報道陣は、それを手伝う気配すらありません。
心労と肉体的疲労が積もっている被災者のかたがたに、当然のようにマイクを
向け24時間カメラをまわし続ける神経もさっぱり理解できません。
現地では今、「大人用の紙おむつ」が不足しています。「赤ちゃん用おの紙お
むつ」は足りています。あとは、トイレが使えなかったり、下着を替えられなかっ
たりする ので「パンティライナー」があると重宝しますが、こちらではもう品切
れで手に入りません。
P&G 、花王、ネピアなどの紙おむつメーカーに電話をして、現状を伝えてくだ
さい。
夜の寒さが厳しいです。お年寄りは使い捨てカイロをもむことすらできないの
、「貼るカイロ」が必要です。
マスコミの仕事は、こういった情報を伝えることだと思うのですが?今日はこ
のあと、小千谷小学校に小泉首相が来るということで、マスコミ報道人の数はさ
らにふくれあがり、「毛布の配給ができないので、小泉さんが返るまで待つよう
に」という連絡が入りました。
何のための視察なんでしょう??
午前中にも、数名の政治家さんが小学校に来ましたが、トイレはどこかとたずね
られ、仮設トイレを案内したところ、「わたしに仮設トイレを案内するつもりか
ね?」と、言われたそうです。いったいこの国は、どうなっているんでしょう…。
現地では、大人用の紙おむつと、パンティライナー、貼るタイプのカイロを必
要としています。
これらの商品を販売している企業の「お客様相談室」宛てにメールを送った
り、電話をかけたりして、「小千谷市の被災者が求めているもの情報」を、伝え
てください。 あなたのblogやHPの中で、ただ伝えるだけでかまいません。皆さ
んの声が企業を。行政を動かします。
マスコミはたよりになりません。マスコミへは、支援活動の妨げとなり、被災
者の心労を倍増させる今の取材のやり方についての、抗議の声をあげてください。
あまりにひどい状況です。
小千谷市にも、続々と個人の方からの救援物資が届いています。
ありがとうございます。しかし、それを種類別に分けて、配布する人出があり
ませんので。 以下の点に注意して送っていただけると大変助かります。
段ボールには、外側に「毛布」「洋服」「下着」など、中身を大きく書いても
らえると助かります。
くつした1足、下着1枚でもうれしいのですが、できれば、ご近所の方と声か
けしあって、ある程度まとまった数があると、とても助かります。
送り先の住所はこちらです。
〒947-8501 新潟県小千谷市城内2-7-5 小千谷市役所
このチェーンメールが、まったくのデマ情報であることは、成城大学の川上善郎教授が、「うわさとニュース研究会」ホームページで解説しているとおりである。
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うわさとニュースの研究会「うわさの日記」 川上氏のサイトでは、このチェーンメールが実に多くのブログや掲示板などで引用、紹介されていることを、リンクつきで紹介している。紹介者の中にはネット上の有名人もいるとか、、。 なかなか、深刻な事件だ。転送してくれやすい相手をねらってメールを転送しているらしいことを考えると、このチェーンメールはいっそう悪質だといわねばならない。
ただし、この事件が起こった背景要因として、マスコミの災害報道の在り方における問題があることを忘れてはならないだろう。阪神大震災のときと同様に、今回の新潟県中越地震でも、とくに発災直後のテレビ報道には、さまざまな問題が見受けられた。
そうした問題の存在自体が、情報転送者の特性以上に、現地発の目撃談という今回のメール内容の信憑性と重要度評価を高め、多くの善意の人が結果的にチェーンメールの伝播役を引き受けてしまうことになったものと推測されるのである。
というわけで、今回の事件は、マスコミの災害報道のあり方に間接的に警鐘を鳴らすものでもあったといえるのではないだろうか。ある流言研究者は、「流言は潜在的な世論」の反映だと喝破しているが、今回の事件も、マスコミに向けられた批判的世論の顕在化したものと解釈することもできるだろう。